「3つの視点コーチング™」は、人が持つ「3つの視点(第1視点、第2視点、第3視点)」にフォーカスした、自己変容や周囲の環境を変革するためのプログラムです。
視点とは「その人のものの見方、考え方の基準、大切にする物事、優先する目安」などのことです。
ひとそれぞれ様々な視点を持っていますが、大きく分けると「自分の視点=第1視点」、「相手の視点=第2視点」、「社会の視点=第3視点」の3つがあります。
「3つの視点」は、すべての人が持つことができますが、同時に複数の視点で物事を考えることはできません。
よって、それぞれの視点を「移動」する必要が出てきますが、この視点の「移動」がうまくコントロールできないことが、さまざまな問題を起こす原因となっています。
今回は視点の「移動」について、そしてそれらが引き起こす問題について解説していきます。
視点の「移動」ってどういうこと?
まずは、視点の「移動」についてです。
「3つの視点」は、それぞれの視点が得意だったり不得意だったりはしますが、基本的にはすべての人が持つことができます。
第1視点では「自分」のことを、第2視点では「相手」のことを、第3視点では「社会」のことを基準に、物事を考えます。
同時に複数のことを進めることができる人や、「この人はいろんな視点から物事を見てるなあ」と感じさせる人を見ると、同時に複数のことを頭の中で処理しているように見えます。
しかし、実際は同時進行で考えているわけではなく、2つ以上のことを「切り替えて」考えています。
ただ、切り替えスピードが早く、さも同時進行で考えているように見えるだけなのです。
人の脳は、同時に2つ以上の物事を思考できません。
猫のことを考えながら、同時に犬のことを考えることはできませんよね。
猫のことを考え終わってから、犬のことを考えているはずで、思考がどこかで切り替わっています。
視点は「考え方の基準」ですから、それぞれの視点で考えようとするときは、視点間の「移動」が必ず伴います。
例えるなら思考の「切り替えスイッチ」のようなものです。
ですので、複数の視点で同時に物事を考えることはできない、ということになります。
視点には「切り替え=移動」が不可欠なのです。
視点の移動の特徴
では、あなたは「視点の移動」というものを意識したことがあるでしょうか?
行動しているときや考えているときに、自分の視点が「いつ切り替わったのか」「何視点から何視点へ切り替わったのか」ということを、いちいち意識している人はいません。
視点の移動を意識するまもなく、ひとつづきのように思考しているはずです。
つまり、人は「自分が今いる視点」も「視点を移動する」ことも、無意識のうちに行われているということ。
自分でコントロールすることが、なかなかできないのです。
3つの視点はそれぞれに、その力を発揮しやすい場面というものがあります。
しかし、無意識なゆえに、その使い所を間違えている場合も多々あり、それが問題を引き起こすのです。
視点の移動が引き起こす問題
それぞれの視点について、視点の良さが生かされやすい、力を発揮しやすい場面と、そうでない場面とそれによって引き起こされる問題についてまとめます。
第1視点
第1視点は自分の視点です。
自分の気持ちや感覚、意志や夢などは、ここから生まれます。
自分の進路やキャリアプラン、生き方を考える上で、基本となる視点です。
「自分らしさ」や「自分軸」の視点です。
また、感性や感情を体感的、感覚的に分かっている視点でもありますので、自己表現や芸術鑑賞などでも、この視点が発揮されやすくなります。
また、第1視点は、自分しかいない世界です。
有り体に言えば、他人や社会のことはどうでもいい視点ともいえます。
ですので、他人と付き合ったり、社会で働いたりというシチュエーションでは、一歩間違うと「付き合いにくい人」「使えない人」といったレッテルを貼られてしまう視点でもあります。
第2視点
第2視点は相手の視点です。
この視点は他人とのコミュニケーションになくてはならない視点です。
相手がどういう状況で、どんな気持ちなのか、それを想像することが可能になります。
なので、他人の話をよく聴くことができたり、安心感や信頼感を与えることができ、人間関係をとても良好に保つことができます。
一方で、眼の前の人に合わせすぎるあまり、自分の意見を持たなくなることもあります。
率先して意思決定をするべきところ、自分を主張すべき場面、人の前に立たなければいけない環境で、ストレスを感じやすくなります。
人に振り回される、人の顔色を伺ってしまう、人間関係が泥沼化しやすい傾向があります。
第3視点
第3視点は社会の視点です。
「知識」「情報」「ルール」など、誰もが同じように理解できるものの世界です。
勉強や仕事で、もっとも活躍する視点です。
俯瞰的、客観的に物事を見ることができ、抽象化も得意な視点なので、具体的な問題解決や目標達成に向けての効率的なプロセス管理、マニュアル作成などの体系化、複雑な物事の処理などで発揮されやすい視点です。
一方、自分の気持ちや、相手の感情や事情はどうでもいい視点です。
目標達成や、ルールの遵守などを最優先してしまうため、感情や感覚を大切にすべき場面では、「人を大切にしていない」「人間らしくない」などといわれてしまうこともあります。
理想的な視点の移動と実際の具体例
ここまで読んでこればすでに、理想的な視点の移動がどのようなものか、お分かりのことと思います。
自分のことを考えるときは「第1視点」、相手のことを考えるときは「第2視点」、勉強や仕事のことを考えるときは「第3視点」で考えればよい、ということです。
「そんなの当たり前じゃないか」と思ったかもしれません。
しかし、これがなかなかできない、というのが実情なのです。
具体例を上げてみましょう。
①「自分らしさ」を探しているのに、友人のマネをして安心したり、雑誌やインターネットの情報を鵜呑みにしてそのとおりにやらないと不安になる。
②自分の仕事がうまくいかないのは、会社のやり方が間違っているからだ。
③相談されたからアドバイスしたのに、相手が「そうじゃないんだよね」と不機嫌になった。
どれも、よくあることだと思うのですが、これは「その時に必要とされた視点に移動できていない」ことが原因である、ともいえます。
①は、「自分らしさ」と言っているのですから、第1視点の話です。
しかし「友人」は第2視点「雑誌やインターネット」は第3視点の話です。
そこに「自分」はあるでしょうか?
②は、「自分の仕事」がうまくいかない、というのは「自分の仕事のやり方」がうまくいっていないということでしょう。
つまり自分、第1視点の話です。
会社のやり方は「第2視点」もしくは「第3視点」の話ですので、やり方が違っていて当然、ではないでしょうか。
③の相談されたからアドバイスしたという状況は、「こうに違いない」と思った自分、つまり第1視点の考え、もしくは「世間一般的にはこうじゃないか」という第3視点の話です。
相手つまり、第2視点は、本当は何を求めていたのでしょうか?
どの例も「その時に必要な視点」で考えることができれば、結果が変わってくると思いませんか?
移動がうまくコントロールできない2つのパターン
自分が今どの視点にいて、どの視点に移動しているのか、というのは無意識で行われていますが、練習すればある程度、コントロールすることができるようになります。
つまり、必要なときに必要な視点を自分で選び取ることができるようになるのです。
視点の移動がうまくコントロールできない、という状態には2つあります。
ひとつは「他の視点にうまく移動できない」、もうひとつは「視点の境界線が薄い」です。
全く反対の状況なのですが、どちらも移動をうまくコントロールできていない、という点で同じです。
他の視点にうまく移動できない
まず、ひとつめの「他の視点にうまく移動できない」です。
これは「その人が得意な視点に、視点が固定しまっていて、他の視点へ移動しにくい」ということです。
視点が固定してしまっている、ということは、その他の視点のことが理解できない、ということです。
言い換えれば「視野が狭く、考えに固執する」ということです。
例えば、第3視点が得意な人は、第1視点や第2視点に入ることがなかなかできません。
客観的に大局をみることには長けていますが、他人の細やかな感情の動きであったり、価値観であったりに、注意を払いにくくなります。
社会的には正しいかもしれない、でも、人としてどうなんだろうね。といったことになりやすい、ということです。
視点の境界線が薄い
ふたつめの「視点の境界線が薄い」は、それぞれの視点の区別がうまくついていない状態です。
相手のこと(第2視点)をまるで自分(第1視点)のことのように感じてしまったり、社会のこと(第3視点)の正義を、あたかも自分(第1視点)のことのように同一化してしまうことがあります。
境界線が薄いため、視点の移動が早くなります。
そのため、考えがグルグルと同じところを回ってしまい、答えが出せなくなることもあります。
まとめ
視点は必ず「移動」が伴います。
そして、その移動は無意識に行われています。
それぞれの視点が、その力を発揮しやすい場面というものがありますが、無意識なゆえに、その使い所を間違えている場合も多々あり、それが問題を引き起こします。
「移動がコントロールできない」という状況には「他の視点にうまく移動できない」、もうひとつは「視点の境界線が薄い」という2つのパターンがあります。
どちらにしろ、問題が起こりやすいのは、間違いありません。
それぞれの視点をしっかりと把握して、移動をコントロールすることができるようにすることは、様々な問題を解決することにつながるのです。