「コミュニケーションをする上で一番大切なことは『人の話を聴くこと』である。」
コミュニケーションを語る様々な書籍や情報で、必ず触れられることです。
そしてその中でも「傾聴」というスキルがあり、これについては、企業などで研修として取り入れられるところも増えてきました。
傾聴の研修を受けたことがある、という方にも、最近は実際によくお会いします。
しかし、研修を受けたからといって「できるようになった、実際に使っている」という人は少ないようです。
もしくは「私はできている」と思っていても、実はそうではない、ということも。
今回は「傾聴」とは何か、どうしたら「本当に傾聴ができるようになるのか」プロコーチの目線から解説したいと思います。
傾聴は必要なのか?
傾聴は、カウンセリングやコーチングなど「自分の深い部分や気づいていない部分」の話をするときに使われます。
普段の生活でそういった場面に遭遇することが、どれぐらいあるでしょうか?
日常会話はもっとフランクだったり、そこまで自分の気持をさらけ出す必要のないことも多いものです。
となると「傾聴」なんて必要ないんじゃない?という結果に落ち着いてしまいます。
まあ、そういう面も否めないな、と私自身、思うのですが、コミュニケーションが極度に苦手で、人と話すのも電話に出るにも緊張してストレスを抱えていた私が、傾聴を学んだことで、コーチとして仕事ができているようになった、という点では、やはり役立つ部分もあることをお伝えしたいわけです。
なので、ここでは「これが分かると、日常でいい感じにコミュニケーションができるよ」というレベルでの「傾聴」について話していきます。
そもそも「傾聴」って何?
そもそも「傾聴」とは「相手の話を心の込めて丁寧に話を聴く姿勢や態度」のことです。
相手の話を深く聴いたり、話し方や表情、姿勢、しぐさといった言葉以外の部分に注意を払ったりすることで、「本当に相手が言いたいことは何なのか」を理解するのです。
とはいえ、この言葉の並びだけでは、あまりに抽象的すぎて、よく分からないと思います。
「傾聴」はスキルでもあるので、具体的な技法があります。
「相手の気持ちを汲み取り、気持ちを言葉にして繰り返す」「意味を変えずに言い換える」などです。
ただ
「相手の気持をくみ取るって言われても、それができればコミュニケーションで苦労しないし」
「意味を変えずに言い換えるって、それが難しいんだよね」
と、悩みポイントが結構あるのも事実です。
カウンセラーやコーチになろうとして傾聴を学んでいたり、本当に必要だと自分が感じているのならいざしらず、管理職研修の一環だから仕方なく、というのでは、身につけるのは大変だと思います。
必要なのはスキルではなく〇〇
「傾聴」でもっとも必要なのは「スキル」ではなく「スタンス(姿勢や態度)」です。
あくまで「傾聴」は「相手の話を心の込めて丁寧に話を聴く姿勢や態度」のことなので、「スタンス」がないと「スキル」は使えません。
例えるなら、筋肉が全然ないのに、野球でホームランを打つ方法だけを学ぶようなものです。
「この角度で、このスピードでバットをボールの中心にあてて振ればホームランさ」と言われても、そもそもバットを振ることすら難しいでしょう。
逆にある程度の筋肉とセンスがあれば、打ち方がイマイチでもホームランが打ててしまうこともあるかもしれません。
「スタンス」が少しでもできるようになると、日常のコミュニケーションがグッと楽になります。
そして、日常生活のコミュニケーションで大活躍するのはこの「スタンス」なのです。
傾聴の「スタンス」とは?
さて、「傾聴」を少しでもかじったことがある人が、一番はじめに感じること、それは「人の話を真剣に聴き続けるのはかなりしんどい」です。
実際、私も傾聴を学び始めたときは、人の話をじっと聴くことがつらくて、3分もできませんでした。
人の話を聴くのって、大概の人にとって、とてもしんどい作業なんですね。
どうしてこんなにつらいのか、というと、それまで自分がやっていた「聞く」スタンスと「傾聴」のスタンスが違いすぎるからなのです。
「私はどれだけでも人の話を聴いていられる」と思う人は「本物の聴き上手」か「話を聴いているつもり」のどちらかです。
自分の「スタンス」を確認してみよう
では、誰かと会話をしているときの自分スタンスを確認してみましょう。
以下のようなことはありませんか?
- 相槌は打っているけれど、周りの環境に気を取られている
- 次に自分が話すことを考えている
- 相手にどんな言葉をかければいいか考えている
- 相手が自分に何を期待しているのか考えている
- 相手の話を聞いて、自分の過去の経験などを思い出している
- 相手の話の展開を先読みして結論を出している
- 話の展開をどう持っていくか考えている
どうでしょうか。
どれかひとつでも当てはまれば、これは「傾聴」のスタンスではありません。
では、「傾聴」のスタンスになるには、どうしたらよいのでしょうか。
傾聴のスタンスに必要なこと
これらに共通することは「結局は自分主体で考えている」ということです。
つまり、「主語が自分」なんですね。
「相手の話を心の込めて丁寧に話を聴く姿勢や態度」とは、眼の前で話している相手だけを見ることです。
つまり「主語が相手」なんです。
「傾聴」するには「主語が自分」であることをすべて「停止」し「主語が相手」に移動する必要があります。
いくらスキルを使ったところで「主語が自分」であってはダメなのです。
主語を「相手」にするには?
会話中に「結局は自分のことを考えている」「主語が自分」になっている、ということにまずは気づく必要があります。
それには、「メタ認知」と「視点」という考えが必要になります。
自分が今何を考えていたかに気づくのが「メタ認知」です。
そして「主語が自分」から脱し「主語が相手」になるのに必要なのが「視点」です。
相手と会話しているとき「あれ、今、私、自分のことを考えていなかった?」と気づいたら、「相手に集中」を繰り返すことが大切です。
そして「自分がどう考えるのか、どうしたいのか」ではなく「相手はどう考えるのか、どうしたいのか」と、頭の中で言葉を変えてみましょう。
まとめ
傾聴の研修を受けても、できない、難しいと感じる方や、「私はできている」と思っていても、実はそうではないという方は、技法だけではなくこの「主語が相手であるスタンス」に気をつけてみてください。
これに気をつけるだけで「とても話しやすい」「相談しやすい」「自分のことをよく分かってくれる」と相手が自然と感じます。
そうすることで、日常生活のどんな場面でも、相手がどんな人でも、相手が気持ちよく、自分がラクなコミュニケーションを取れるようになりますよ。
もっと手っ取り早く「メタ認知」や「視点」「コミュニケーション」をどうにかしたいなら