「自己肯定感」=「自分に甘い」?自己肯定感を高めるのに絶対に必要なのは「自分を〇〇にする」こと

最近「自己肯定感」という言葉をよく見たり聞いたりする、という方も多いのではないでしょうか。

自己肯定感とはひとことでいうと、「ありのままの自分を肯定する感覚」「自分はこれでいいのだという感情」のことですが、ぶっちゃけよく分からない、という人がほとんどだと思います。また、抽象的な言葉が先行しているせいか、間違ったイメージや使い方をしている人も見かけます。

今回は「自己肯定感」とは何なのか、そして自己肯定感を高めるために押さえておきたいポイントを解説します。

目次

「自己肯定感」とは?

こんな話を始めましたが、私は基本的にセッションなどでは「自己肯定感」という言葉はなるべく使わないようにしています。なぜなら「自己肯定感」と一言で言っても、ひとそれぞれに受け止め方が全く異なるからです。

例えば
「私みたいなダメダメ人間を認めるなんて絶対無理」
「成長しない人間になっちゃいそうで怖い」
「それって、結局、自分勝手ってことなんじゃないの?」
「自己肯定感=自分への甘やかし」と受け取ってしまっている人もいれば、それとは逆に

「今のままの自分が一番。だから私を否定する人や環境が間違っている」
「短所の何が悪いの?だってそれこそが私らしさだから」
と、現状維持や自分や周囲への甘えを正当化するための言い訳として使っている人もいます。

どちらにしろ「自己肯定感」が高い状態ではないからこその考え方なのですが、私のクライアントの方も、はじめはこうおっしゃる方がほとんどです。昔は私自身もそうでしたので、その気持ちはよく分かります。しかし、こうした偏ったイメージを持っていることは、セッションや講座の妨げになることが多いため、なるべく使わないようにしているのです。

その代わり、使っている言葉は「自分で自分を大切にすること」という言葉です。自己肯定感が壊滅的に低かった当時の自分が、一番はじめに「それならできるかもしれない」と思った言葉がこれでした。

自己肯定感が高い人の特徴

では、自己肯定感が高い、つまり「自分のことを大切にできている」人には、どんな特徴があるのでしょう。

1.ポジティブに考える
2.主体的に思考、行動できる
3.他人や社会に寛容になる

それぞれ見ていきましょう。

1,ポジティブに考える

「頑張っても評価されない」「周りに理解されない」「私なんて人と比べたら」「どうして私ばかり損するのだろう」「将来が不安で仕方ない」「周りはバカばっかり」「世の中こんなもん」「孤独感がある」「なんだか虚しい」…。

自分が大切にできていない、ということは「心がスカスカで満たされない状態」ということです。自分を大切にできていない、つまり自己肯定感が低いと、物事の悪い面、ネガティブな感情ばかりに目が行くようになります。そもそも人間の脳は「ネガティブなこと」をポジティブなことよりも2~3倍感じやすいので、放っておけばどんどんネガティブに偏ります。

そして、人は、自分の心を周りに投影します。ネガティブな感情を持っているときは、実際はそうでもないにかかわらず、周りで起こることがネガティブに感じます。自分ばかりが不幸で、周りの人はすべて幸せに見える、といったような、とても視野が狭い状態になります

また、心の投影がうまくいかなかったときは、そこになにかしらの違和感を覚えます。例えば、ネガティブな考えを持っている人は、ポジティブな人と一緒にいると違和感を覚えます。そのまま、ポジティブな人につられて、自分も頭もポジティブに切り替えることができれば、なんの問題もありません。

しかし、なんだか疲れてしまったり、相手のことを「脳天気な人」とか「馬鹿なんじゃないか」と思うことで、自分を正当化、つまり「心の投影が正しくされている」ということを優先してしまう人もいます。こうなってしまうと、頭では分かっていてもなかなか「物事の良い面」を見ることが難しくなります。

自分を大切にするようになると、物事の良い面を無理やり見ようとしなくても、自然とそこに目が行くようになります。

良い面を見ると、嬉しくなったり、感動したりします。ポジティブな人に違和感を覚えなくなり、周りにポジティブな人が増えます。ポジティブな人や環境からは、ポジティブな反応が返ってくる。こうした好循環によって、より自分の心が満たされていく、つまり自己肯定感が高い状態を保つことができるようになるのです。

2,主体的に思考、行動できる

主体的というのは「自分で決めて、自分でやる」ということです。違う言葉でいうと、自分の価値観にそった選択、行動をすることです。

「ええ、そんなのいつもやってるよ」と思うかもしれませんが、「これをやると相手が喜ぶから」「こうしたほうが効率的だから」など「自分で決めているようで、実は他人や社会が基準になっている」ことはよくあります。

また、「本当はやったほうが良いと分かっているのに、眼の前の欲求に流されしまう」、「無関心を装って物事に本気にならない」、「どうせ私には無理だからやらない」というのも、自分の価値観にそった選択、行動ではありません。

つまり、自分の本当の考えや気持ちに気づいていない、もしくは、気づいていても無視している、というなら、それは主体的ではないのです。

周りの人や社会に自分を合わせてばかりいると、どんどん自分を大切にできなくなります。つまり、自己肯定感が下がります。

そもそも「自分のことを大切にできていて、心が満たされている」状態は、自分の価値観を沿った選択、行動をすることで叶えられてきます。ですので、主体的に考えられて当然です。

また、「自分の価値観を大切にすること」はそれ自体が「自分を大切にすること」ですので、ますます自分を大切にできるようになっていきます。

3,他人や社会に寛容になる

自分で自分を大切にできるようになると、自分の価値を自分で認めることができるようになります。すると、大切な人や、全く知らない人や、社会そのものに対して寛容になっていきます。

自己肯定感が低い人は、他人からの評価で自分の価値をはかろうとします。そのため、他人から自分がどう見られているのかといったことを気にしすぎる、自慢話やアドバイスが過ぎる、他人を批判したりするといった行動を取ることがあります。

「以前は家族にちょっとしたことでイライラしていたのに、今は全然気にならない」、「今までは会社に不満ばかり持っていたけれど、今はちょっと離れたところから冷静に見ている自分がいる」、「今までも人に優しくしようと頑張って取り繕っていて、いつも不安だったけど、今は自然体で人と接しても大丈夫だと感じる」、自己肯定感が高くなると、自然とこんなふうに感じるられるようになります。

特に無理をしているわけでも、コミュニケーションの練習をしたわけでもないのに、どうして?と、クライアント方も不思議がられるかたが多いのですが、これは自分を大切にできるようになった結果なのです。

これは、「自分のエネルギーが満たされて周りを受け止める余裕ができた」ということ。こうなってくると、周りからの評価も上がり、付き合う人も変わってくるので、「自分のことを大切にできていて、心が満たされている」状態がより良く続くようになります。

「自分で自分を大切にする」とは?

自己肯定感が高くなると、自分の状態や周りの環境の好循環が起こり、毎日をラクに、幸せに過ごすことが自然とできるようになります。では、「自分を大切にする」とは、具体的にどうすることなのでしょうか?

「自分で自分を大切にする」というのは「あなたが大切に思う人にするように、自分に接する」ぐらいの意味だと思ってください。はたしてあなたは、あなたが大切な家族やパートナーや友人に接するように、自分に接しているでしょうか。

例えば、パートナーの体調がすぐれないのに、無理をしてまで働いてほしいと思いますか?子供が失敗して落ち込んでいるときにその失敗を責め立てますか?あなたの大切な人が弱みを見せてくれたら、それを鼻で笑いますか?

「自己肯定感=自分への甘やかし」と受け取ってしまいがちな人は、一度自分の自分への態度を見直してみましょう。

または、「自分が自分の一番の理解者であること」と考えてもいいでしょう。家族であれ、恋人であれ、親友であれ、あなたにはなれません。どれだけ理解しようとしても、どれだけ共感しようとも、あなたと全く同じ、というわけにはいきません。

あなたはあなたの一番の理解者です。眼の前のことに反応し、流されるだけでも生きてはいけます。そうやって生きていると、どんどん「自己肯定感」は低くなっていき、ますます人が離れ、孤独になっていきます。それは本当にあなたが望んでいることですか?周りの人が自分を理解してくれないと感じるなら、まずは自分だけでも自分を理解しようとしてあげてください。自分が自分の一番の味方であると、決めてください。

「自分で自分を大切にする」ようになると、心が満たされ、腹の底から「私は幸せなのだ」と言えるようになります。そしてその状態こそが「自己肯定感が高い」状態なのです。

自分で自分を大切にできない原因

コーチングや普段の生活で人と話していると「自分で自分を大切にできていない」つまり、自己肯定感が低い方がまだまだ多いなあと感じます。

「自分を大切にするということに抵抗感がある」
「自分を大切にしようと思っても、周りのことを考えてしまってできない」
「自分を大切にするという感覚がそもそも分からない」
「自分を大切にしてるつもりなのに、不安や不満がなくならない」

といった具合です。

日本には「謙譲の美徳」や「和を重んずる」という文化があります。自分は一歩引き、他人のことを考えて社会的に、協調的に行動する、というのは日本人の誇るべき文化だと思いますし、そんな日本人が私は大好きです。

しかし、自分以外の人や、社会のルール、モラルなどを優先し過ぎてしまって、自分を忘れがちになることがあります。そうして「自分を大切にするとは一体どういうことか、よく分からない」という状態になってしまっている人も多いのです。

また、最近の情報の氾濫、得た情報を自分に都合よく物事を解釈してしまう人もいます。間違った情報を、自分を守るために、言い換えれば「自分と向き合わないために」使ってしまって、自分の本当の声を無視し続けている人もいます。

「自分で自分を大切にする」とは、極々、個人的で、感覚的で、体感的なものです。頭で考えて理解できるものではありません。自分の感覚や感情に正直に向き合うことが必要です。

つまり、自分と向き合わないことを選んでいる限り、自分で自分を大切にすることはできないですし、「他人のこと」だったり「社会的なこと」といった「考え」を優先してしまっていてもできないのです。

3つの視点コーチング™的で見るできない原因と対策

自分を大切にしたほうがいいと分かっても、できないという場合を、3つの視点から解説してみます。

自分以外の人や、社会のルールやモラルを優先しすぎている、そして自分を大切にできなくなっている状態を、3つの視点では「第1視点が小さくなっている」状態と見ることができます。

「自分で自分を大切にする」とは「自分のこと」ですから、視点でいえば第1視点の話です。つまり第1視点にいてこそできること、になります。

視点は状況によって、それぞれの視点間を移動し、その力を発揮しますが、それは無意識で行われています。「相手」の視点である第2視点、「社会」の視点である第3視点、それぞれ、または両方は得意で、その視点にいることが多い人は、第1視点が相対的に小さくなって、第1視点への移動がしにくくなっています。この状態が「頭で考えることはできるけれど、自分の気持ちや感情や感覚を無視しがち」ということです。

第2視点や第3視点にいるまま、第1視点のことを考えることは絶対にできません。「自分を大切にするということに抵抗を感じる」、「自分を大切にするという感覚がそもそも分からない」、「自分を大切にしてるつもりなのに、満たされない」、というのは、第1視点に移動することなく、他の2つの視点から、第1視点ですべきことをしようとしているのかもしれません。

相手や社会がどれだけあなたのことを「すごい」と言っても、本人がそれを喜べるかどうかは別の話ですよね。これと同じことを自分で自分にしていると思ってください。ですので「自分で自分を大切にする」には、まずは第1視点に移動することから始めなければなりません。そして、第1視点を大きくしていくことが大切です。

また、第2視点や第3視点から自分のことを大切にしようとすると、結局それは第2視点、第3視点でやっていることになりますので、その視点が成長します。すると、ますます第1視点との差ができてしまい、第1視点への移動が難しくなります。

結果、「自分で自分のことを大切にする」ことをすればするほど、自分のことを大切にすることが難しくなる、といった矛盾が起きるのです。

まとめ

「自己肯定感」を簡単に言うと、「自分で自分を大切にすること」です。自分で自分を大切にするというのは、「あなたが大切に思う人にするように、自分に接する」、「自分が自分の一番の理解者であること」です。

自分以外の人や、社会のルール、モラルなどを優先し過ぎてしまって、自分を忘れがちになることが多いと、「自分で自分を大切にする」ということから遠ざかってしまいます。

自分で自分を大切にできるようになると

  1. ポジティブに考えるようになる
  2. 主体的に思考、行動できる
  3. 他人や社会に寛容になる

などのメリットが、ますます自己肯定感が上がっていきます。

3つの視点的に言えば、自分の視点である第1視点が小さくなり、移動できない状態ですので、まずは第1視点に移動すること、そして第1視点を大きくしていくことが大切です。

田代 真理
Mari Coaching Room 代表
メンタルコーチ。コーチ歴16年、手帳歴19年。「3つの視点」にフォーカスした自分と周囲を変革するための独自メソッド『3つの視点コーチング™』で、個人セッション、講座、法人社外コーチとして活動。手帳を使ったセルフコーチング・自作テンプレート『大人が整うノート』を提供中。
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