「ネガティブな気持ちになると、なかなか抜け出せない」
「悪いことばかり考えて悪循環に陥ってしまう」
「愚痴りたい、でも人に聞いてもらうのには抵抗がある」
どんな人でも、気分のいい時悪い時があって当然です。でも、ネガティブな状態はできるだけ避けたいですよね。
「ネガティブな気持ちに一旦陥ると、なかなかそこから抜け出せない」「気にしないようにしようと思っても、悪いことばかりが目につくようになってしまう」と悶々としてしまいがちですが、そうなるのは仕方のないこと。その状態からいかに早く抜け出せるかが大切です。
ということで、今回は自分の中の負の感情を認めて、いらないものを頭から追い出し、すっきりとした気分と頭を回復させる「エクスプレッシブ・ライティング」をご紹介します。
ネガティブ・ループを断ち切ろう
ひどく疲れていたり、やるべきことが多かったり、自分を追い込む思考の癖があったりすると「自分はどうしてこんなふうなんだろう?」「こんな自分は嫌いだ」と、どんどん自分を攻撃して、悪循環に陥ってしまいます。
さらに、自分を攻撃するようになると、その攻撃を避けようと「行動」そのものをしなくなります。「なんとなくやる気が出ない→失敗しないように仕事もそれなりに」「すっきりしない→余計疲れるから出掛けるのはやめよう」といった感じです。
行動しないことで、気分転換であったり、気持ちに気がつくきっかけを失っているのと同時に、考える時間が増えてしまいます。そうなると「ネガティブな自動思考」が始まりますから、ますます億劫になる、といった負のループが延々と続くのです。
これを断ち切るには「自分でそのループに入っていることに気がつくこと」が必要なのですが、人間は自分のことを客観的に見ることが、苦手です。しかし、練習すればそれは必ず誰でもできるようになります。
そのスタートといえるものが、今回の方法です。
手帳を使う人は真面目な人が多い?
手帳やノートの書き方や3つの視点コーチング™で、たくさんの方に出会ってきて感じることのひとつに、手帳に興味がある、または手帳を使いたいというかたは、基本的に「人生を前向きにちゃんと生きていきたい」と思っていて、その情報収集に余念がない方が多いということです。
真面目だったり、成長したいと望んでいたり、人にやさしくありたいと思っていたりで、やるべきことや時間と真剣に向かい合うための道具として、手帳やノートを選んでいるんですね。
ただ、一方でそういう方たちは「自分に厳しすぎる」とか「弱いところを人に見せられない」とか、自分を追い込んでしまうところがあるようです。
「感情を周りに当たり散らすなんてもってのほか!」と、自分の感情を押し殺して出さないようにしていたり、さまざまなことを責任を持って、それらを上手に効率的にこなそうとするあまりに、マルチタスクを自分に課して、体も心も疲弊してしまっていたりしています。
そうすると「人生を前向きにちゃんと生きていきたい」ために手帳やノートを使っていたはずなのに、そこからどんどん離れていってしまっている、ということもあります。
ネガティブな感情と上手に付き合う
周りから見れば「感情のコントロールができている」「いつも落ち着いていて頼りになる」とみられるかもしれませんが、負の感情を我慢したり、軽く見ることは、決して良いことではありません。
特に、第2視点や第3視点が強い人は、自分の感情としっかりと向きあえないまま、それが常態化してしまっていることが、ままあります。それが原因で心身のちょっとした不調を抱えている人も多いのです。

特に不安や不満などのネガティブな感情は頭の中にあると、どんどん肥大します。自分の頭の中のことは、自分でしっかり理解できていると思いがちですが、実はそのほとんどは、モヤモヤと形のない影のような状態で、はっきりと自分で認識できているわけではないのです。
どんなに頭の良い人でも、頭の中だけで考えをまとめるのは難しいので、いったんそれを「頭の中から出す」必要があり、それが「書く」ということで可能になるのです。
人に話すのも同様の効果がありますが「人に愚痴を言えない」「聞いてもらうのは悪い気がする」という人でも「書く」ことなら、誰にも迷惑をかけることはありません。
頭の中のモヤモヤしたものを、書き出して形を与える、つまり言語化することで、その体積を減らすことができます。
ネガティブな出来事や感情を、忘れたと思っていても、しつこく顔を出すのは、それがちゃんと頭の中で整理できていないから。自分の感情を書き出すことで、ストレスが減り、思考の堂々巡りや心身の疲れを癒やすことができます。
自分の感情ときちんと向かい合うことは、
・ストレスに強くなる
・感情のコントロールがうまくなる
・頭の中がクリアになる
・不安が解消する
・自分を客観視できるようになる
・人生の満足度が上がる
といったように、日々の暮らしや人間関係をよくする効果がたくさんあります。
書いて負の感情と向き合う方法
では、手帳を使って「自分の負の感情と向き合う」エクスプレッシブ・ライティングの方法をご紹介します。
紙とペンがあればどこでもできますが、ひとりで落ち着いてできる環境を選んだほうがよいでしょう。書いたあと紙を捨てるという選択もありますので、ノートを破りたくない人はコピー用紙などを用意してください。
コツがいくつかありますので、順を追って説明します。
STEP1 とにかく気持ちを書き出す
ただひたすら自分の思いや感情を正直に、吐き出していきます。
「あいつ超ムカつく!」という誰かや環境への不満。
「こんなはずじゃなかったのに」という過去への後悔。
「自分が情けない」「こんな自分が嫌いだ」いう自分への不満。
「これからどうなるのだろう」という未来への不安や心配。
きれいにまとめようとか、文章が変だとか、話が前後してるとか、そんなことは一切考えないこと。なぐり書きでいいです。誰かに見せるわけではありませんので、忖度もいりません。
始めのうちはこれだけでも、スッキリするでしょう。でも、ここで終わってはいけません。ここで終わってしまうと「嫌な気持ちや出来事を自分に繰り返し叩き込んでしまう」ことになってしまい、全く効果が感じられないどころか、逆効果にすらなりかねません。
STEP2 原因を考えてみる
書いたものを一度見てみましょう。「上司にイライラする」「絶対に私は悪くない!ムカムカする!」など、そこにはなにかしらの「感情」が並んでいると思います。
それを見て、少し冷静になれている自分がいませんか?もしそうなっていたら、「原因となった出来事」と「感情」をセットで書いてみましょう。
その感情を引き起こした「きっかけ」は必ずあります。誰かの言動かもしれないし、テレビやインターネットでみた情報かもしれません。
難しく感じる方は、次のような感じで誰かに質問していく気持ちで考えてみましょう。実際にプロコーチである筆者が「3つ視点コーチング™」のセッションで活用している質問を例として上げておきます。
ポイントは「何?」で聞くことです。
「上司にイライラする」
(上司の何にイライラするんだろう?)
「上司が話している(原因)とイライラする」
(上司が何を話しているとイライラするの?)
「上司が仕事のやり方について話しているとイライラする」
(そのことを話しているときの何にイライラする?)
「上司が偉そうに自慢げに話している態度にイライラする」
と、できる限り出来事は細かく具体的にしていきましょう。はじめは難しく感じるかもしれませんが、できるところまでで構いません。やっているうちに、少しずつできるようになっていきます。
STEP3 感情を明確にしてみる
これで「原因」が明確になりました。次は「感情を細かく明確に表現」していきます。難しいと感じるときは、以下のように質問してみましょう。
「上司が偉そうに自慢げに話している態度にイライラする」
(イライラを他の言葉に変えるとどうなるだろう?)
「上司の態度が許せない」
(具体的には何が許せないんだろう?)
「あんな仕事ぶりで評価されているのが許せない」
「なんか理不尽。理不尽さに対しての怒り」
といったように、感情を細かく明確に分解していきます。
これをすることで、自分が何を感じているかを自己分析できる力が養われ、現状への対策も練りやすくなります。
STEP4 ここが一番大切、仕上げ
書き終えたら、全体をぼんやりと眺めてみましょう。そして、以下のことを考えたり、書き出してみてください。
大切なことなので繰り返し言いますが、このステップを飛ばしてしまうと、負の感情を自分に繰り返し叩き込むことになってしまい、スッキリするはずが逆にひどくなってしまった、ということになりかねません。
「頭の中のネガティブな感情を言語化して」「頭の中でそれらが占めていた体積を減らし」「冷静に自分のことを客観的に見ることができるようにする」ことが目的ですので、面倒に感じるかもしれませんが、少しずつでもいいので、やってみてください。
① 今どんな気持ちですか?
② 書く前と比べて、変わったことは何ですか?
③ これまで頑張ってきた自分に、優しい言葉をかけてあげてください
④ 書いたことや、そう感じていた自分に対して「そうだよね、それでいいんだよ」と認めてあげてください
⑤ 「ま、いっか」と声に出して言ってみましょう
⑥ もし、それが自分のことではなく、友人からの相談だとしたら、どういう言葉をかけてあげますか?
⑦ それは、あなたの人生にどれほどの影響を与えることですか?なくてはならないほど大切なことですか?
書いたものは「捨ててしまいたい!」と思ったら破るもよし、シュレッダーにかけるもよし。燃やすもよしです。そのときに、できたら声に出して「さよなら」「バイバイ」「えいやー」など、自分から、すっかり離れていくイメージの言葉を言うと効果的です。
手元に置いておきたいなら、置いておいてかまいません。中には「デスノート」と称して、専用ノートを作っていらっしゃる方もいます。その方は「デスノートがあると思うだけで、ちょっと落ち着けるんです(笑)」とおっしゃっていました。
まとめ
不満や不満などの負の感情や、それによるネガティブ・ループを抜け出すために効果的な「エクスプレッシブ・ライティング」をご紹介しました。
負の感情を我慢したり、軽く見ることは、決して良いことではなく、特に第2視点や第3視点が強い人は「人に愚痴を言えない」「聞いてもらうのは悪い気がする」といった方が多く、自分の感情としっかりと向きあえないまま、それが常態化してしまっていることがままあります。
エクスプレッシブ・ライティングは「頭の中のネガティブな感情を言語化して」「頭の中でそれらが占めていた体積を減らし」「冷静に自分のことを客観的に見ることができるようにする」ために「書く」方法です。ぜひ、試してみてください。
詳しくやり方をご紹介しましたが「やっぱり自分でやるのは難しい」と感じたときは、誰かの力を借りてみるのも一つの方法です。無理をせずに、頼ってみてください。
