「あのときああしていれば」
「もっと気をつけていれば」
仕事で失敗してしまった、友人と喧嘩してしまった、そんなときは落ち込んだり気に病んだりしてしまうものです。
寝れば忘れてしまう、という人もいると思いますが、その出来事が自分にとって大切なことであればあるほど、気になってしまいますよね。
「考えないようにしよう」と思っても、なかなか気持ちが切り替えられなかったり、次は同じような失敗をしないようにしたいと、いろいろ考え始めてしまい、そこから抜け出せなくなってしまうことも。
今回は「失敗を引きずらない方法」について解説していきます。
失敗からいかに早く立ち直るかが重要
「失敗は成功のもと」
「仕事に失敗はつきもの」
「人間だから失敗して当然」
頭では分かっていても、やはり失敗をしてしまうのは嫌なものですし、引きずってしまいがちです。
失敗を引きずってしまうと、やる気がどんどん無くなっていったり、他の仕事や人間関係にも影響を及ぼします。
さらにそれが次の失敗を招き、どんどん悪循環に陥っていってしまう…すると「自分はダメな人間なのだ」という結果に落ち着いてしまったりして、ろくなことがありません。
こういった場合の問題は「失敗した事実」ではなく「失敗をうまく受け入れられない考え方」にあります。
失敗をしてしまうのは、人間ですから仕方ありません。
失敗を活かして、次に備えるしか挽回する方法はないのです。
そのためにも、さっさと失敗から立ち直る必要があります。
失敗を引きずらない方法5つ
では、どういった考え方をすれば失敗を引きずることなく、すぐに立ち直ることができるのでしょうか。
それが次の5つの方法です。
- 嫌な気持ちになっていることに気づく(失敗を受け入れる)
- 「反省」ではなく「検討」する
- 事実と主観を分ける
- コントロールできたこととできなかったことを分ける
- 自分ができる行動を考える
それぞれを詳しくみてきましょう。
1,嫌な気持ちになっていることに気づく(失敗を受け入れる)
失敗をすると、嫌な気持ちになります。
大抵の場合、「失敗を忘れてしまいたい、もう二度と失敗したくない」と考えてしまいがちです。
ですが、ここで「ああ、失敗しちゃって嫌な気持ちになっているんだな」と、その時の自分の気持ちに気づき、一度受け入れてしまいましょう。
「そりゃそうだよね、あんな失敗したら誰でも落ち込むよね」
と、自分を慰めてあげましょう。
なぜこれが必要なのかというと「失敗から逃げ出したい、忘れてしまいたい」という気持ちが、ますます自分を追い込んでしまうからです。
人は何かを考えるとき、その対象を頭に思い浮かべないと考えることができません。
そして皮肉なことに「考えないように」と考えても、その対象を考えてしまうのです。
「シロクマのことだけは絶対に考えないでください」
と言われた途端、シロクマが頭に思い浮かんでしまう、というやつです。(アメリカの心理学者であるダニエル・ウェグナーの「シロクマ実験」)
つまり「失敗を忘れてしまいたい、もう二度と失敗したくない」と考えると、その場面が自然と頭に描かれてしまうということになります。
失敗して落ち込んでいる時というのは「失敗したときのこと」を何度も何度も頭の中で再生してしまっています。
これが、失敗した場面を思い描くことで、どんどん気力が低下し、自信をなくして、ますますネガティブな気持ちが湧いてきます。
つまり、気持ちを切り替えるタイミングを逃してしまうのです。
これを防ぐために「失敗を忘れてしまいたい、もう二度と失敗したくない」と考えないようにする必要があります。
とはいえ「考えないようにする」のは難しいことです。
まずは「自分は今、嫌な気持ちになっている。それは自分がわざわざ失敗を思い出して、自分を追い込んでいるからだ」と、嫌な気持ちになっている自分を認めましょう。
そこまで自分を追い込まなくても、大丈夫です。
もっと建設的に、うまくやる方法をとって、繰り返し考えないように、つまり「失敗を忘れて」しまいましょう。
2,「反省」ではなく「検討」する
自分の気持ちに気づき自分を慰めることができると、人は前向きに考えることができるようになります。
そうなったら「どうしたら失敗を忘れられるのか」ではなく「どうしたらこの失敗を考えなくてすむようになるのか」ということを考えていきましょう。
「失敗したら反省しなさい」という人がいますが、そういう人に限って、自分を正当化したいだけだったりします。
「反省」とは「自分がしてきた行動や発言を振り返ること、そしてそれらについて評価を下すこと」という意味です。
ここから分かるように、「反省」とは「過去」に焦点をあてる行為です。
残念ながら過去を変えられる人間はいませんので、それをしたところで、失敗を頭の中で繰り返してつらくなる一方です。
また「自分に非がある前提」という批判的なニュアンスを感じる人も多い言葉でもあり、本来ならば、自分になんの責任がなくても自分の行動や、自分自身に非があると思い込みやすいものでもあります。
ですので、同じ失敗をしないようにしたいのなら、反省ではなく「検討」をすべきです。
「検討」とは「物事をよく調べて考えること。また、それでいいのか物事の善し悪しをいろいろな角度からしっかり考えること」です。
「反省」が主観的な響きを持つ一方、「検討」は少しそこから離れた「客観的」な響きを持ちます。
そして「検討」は過去ではなく「未来」に向かってするものです。
「二度と同じ失敗をしない」という「よりよい未来」を手にするために、過去を検討材料として、主観的な感情とはなるべく切り離して考えるようにしてみましょう。
3,事実と主観を分ける
失敗を検討するための具体的な方法についてみていきましょう。
失敗には2つの側面があります。
「事実としての失敗」と「主観的な失敗」です。
事実とは、実際に起きた出来事のことです。
たとえば「売上が目標の50%だった」というのは事実です。
一方「50%しか取れなかった!大失敗だ!」と思うのは主観的な失敗です。
「売上が目標の50%だった」というのは、誰が見ても同じ結果です。
ただ、それに対して「失敗した」と感じるか否かは人それぞれです。
もしかすると「50%もとれた!」と感じる人もいるかもしれません。
自分がどんな「事実としての失敗」に対してどんな「主観的な失敗」を感じているのかを考えてみましょう。
すると、実は
「失敗そのものがしんどかったわけではなく、上司や周りの目の批判がつらかったのだ」
「頑張れなかった自分が情けないのだ」
「前はうまくいったのに今回はダメで悔しいのだ」
といった隠れた感情が出てきます。
これに気づくことができるだけでも、ちょっとすっきりするはずですし、対策も練りやすくなります。
4,コントロールできたこととできなかったことを分ける
次に、その失敗がどのような状況で起きたのか、検討してみましょう。
失敗に限らず、すべての物事に明確な原因があるとは限りません。
そもそも、自分ひとりがカバーできる範囲など、考えにしろ行動にしろ極々限られています。
それこそ「運が悪かった」としか言いようのない出来事も山ほどあるのです。
ですから、すべてを自分や他の誰かや、環境のせいにしたところで、次も同じことが起きないとは限りません。
それよりも「今回の失敗で自分がコントロールできた要因」「自分ではコントロールできなかった要因」を明確化することに注力しましょう。
たとえば「先方の手違いで、配送が間に合わなかった」のはコントロールできない要因ですが、「配送について事前にちゃんと確認しなかった」のは、自分でコントロールできた要因です。
頭の中で考えていると、ぐちゃぐちゃになりますので、ぜひ、紙に書くなどして、整理してみてください。
様々な要因が組み合わさっていることが、目に見えるようにして、対策を練りやすくしましょう。
5,自分ができる行動を考える
失敗がどんなもので、どんな要因で起きたのか、それがしっかり検討できると、自ずと「二度と同じ失敗を繰り返さない」方法や落とし所が見えてきます。
失敗には「事実としての失敗」と「主観的な失敗」がありました。
「事実としての失敗」は過去の出来事なので、もうこれはどうしようもありません。
しかし「主観的な失敗」は、どうにかすることができます。
「今回の失敗で自分がコントロールできた要因」「自分ではコントロールできなかった要因」もそうです。
「自分がコントロールできた要因」に着目しましょう。
「主観的な失敗」は、果たして本当に「失敗」だったのでしょうか。
自分がそう思いこんでいるだけで、実は一定の評価をしている人はいるかもしれません。
その失敗があったからこそ、気づいたこともあるはずです。
失敗を失敗のままにしておくのか、それとも「意味」を変えて、未来に持っていくのかは自分次第です。
「自分がコントロールできた要因」は、なんだったのでしょうか。
それを今度はうまくコントロールするために、何をしますか?
その時の自分ができることを実際の行動に落とし込みましょう。
ここまで考えたら「検討」は終わりです。
まとめ
失敗を引きずらないための5つの方法について解説してきました。
失敗をしてしまったら、ちゃんと落ち込んだりして、まずは自分の感情をじっくり味わいましょう。
十分それができたなら、自然と前向きで建設的な考えができるようになります。
そのうえで、客観的に検討を重ねれば、失敗を引きずることも、同じ失敗をすることもなくなるはずです。
もっとうまく「検討」したいなら3つの視点を活用しよう。
