「イライラが募って、思わず部下を怒鳴ってしまった」
「とにかくつらくて、我慢できずに泣いてしまった」
「緊張してしまって、プレゼンに失敗した」
感情を抑えきれず、思わず取ってしまった行動について、後悔したり罪悪感に苛まれたりすることは、誰にもであると思います。
気持ちをすぐに切り替えられればいいですが、そこから抜け出そうとして、余計に泥沼にハマってしまうことも。
今回は「ネガティブな感情をコントロールする正しい方法」について解説していきます。
こんな人は特に注意!
自分の感情に振る舞わされるのは、とても疲れます。
仕事や人間関係にも影響してくるので「自分の感情をうまくコントロールしたい」と考える人は多いでしょう。
しかし
頭では「こうした方がいい」と分かっていても感情がそれについてこない。
そもそも、どうしてそんな気分になるのか分からない。
といった人がほとんどだと思います。
特に、
- 感情を「外に出さない」ようにしている人
- 「問題解決=原因をつきとめて対策を練る」という方法をとりがちな人
は、注意が必要です。
取りがちな2つの方法
感情をコントロールしようとするとき、人は大きくわけて2つの方法を選択しがちです。
ひとつは、目の前の感情から「目をそらして忘れる」方法。
もうひとつが「原因を追求して対策を練る」という方法です。
ひとつめの「目をそらして忘れる」方法は、「我慢する」「気をそらす」「体を動かす」など、無理矢理にでも気分転換してしまう方法です。
この方法は、ちょっとした気分の変化や、瞬間的な事柄にはとても有効です。
たとえば、「車で走っていたら、無理な割り込みをされた」とか「たまたま、駅でマナーの悪い人を見てしまった」とか。
少し気分が乱されたけれど、それが長い間続くわけではない、ということですね。
ですが、これが「一緒に暮らしている家族」とか「会社の上司」とかになると、話が変わります。
気分転換だけでは到底無理です。
また、真面目な人や、責任感の強い人の中には、ちょっとしたことですら、一旦乱れた気持ちを引きずってしまう、という人もいます。
この目をそらして忘れる方法は、「今はいいけど、また同じことが起きたらいやだな」と、考える人もいるかもしれません。
そうなると「ネガティブな感情を湧いてこないようにしたい」と考えるようになります。
つまり「感情が湧いてくる原因をつきとめて対策を練る」方法をとろうとするのです。
「ぐるぐる思考」という落とし穴
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
感情が湧いてくる原因をつきとめようと、考え始めると、こんな思考のループに陥ることがあるからです。
「どうしてイライラするんだろう」
「上司の言動が気に入らないから」
「でも、上司が変わらないことは分かっている」
「じゃあ、どうすればいい?」
「会社の体制が悪いし、どうしようもないじゃん」
「転職する?でも今の仕事は好きだし」
「もしかしたら私が間違っているのかな」
「結局こんなことで悩んでる私がダメなんだ」
「でも、絶対、上司も会社も悪いよね」
「イライラする…」(はじめに戻る)
いわゆる「ぐるぐる思考」と呼ばれる状態です。
原因が自分自身や、自分を取り巻く環境の理不尽さにあると考え、不満や不安を感じるようになってしまうんですね。
間違った方法による危険性
本当の原因が把握できず、気づけば同じところをグルグルして答えがでない。
そして、最終的に「自分はこういう性格なのだから」「会社が悪いんだ」と諦め、言い聞かせるだけになってしまうことも。
こうなると「ネガティブな感情を湧いてこないようにしたい」とその原因を考え始めた結果が、ますますネガティブな感情を生み出す状態になってしまいます。
不満や不安は、無気力感を生み、さらに悪循環を招きます。
さらには「感情に蓋をする」「感情を無視する」ことを選択してしまう場合もあります。
自分の感情を抑え込み、感じないようにすることで、自分の心を守るようになってしまいます。
第3視点の方に多く見られるのですが「自分の感情がよく分からない」「感情が動かない」といった状態です。
一見、楽になったように見えますが、不満や不安を抱えているのにも関わらず、それを感じることができない、という点では、より危険な状態です。
これらをつづけていると、体調にも影響が出てきます。
こんな状態を避けるためには、「感情」とはそもそも一体どういうものなのかを知ることが大切です。
正しい感情のコントロール方法2つ
こちらの記事で「感情」は「行動」の動機だという話をしました。

「感情」をコントロールすることでなんとかなる「行動」もありますが、そうでないこともたくさんあります。
ぐるぐる思考も、感情を無視していることも、精神的に良いことではありません。
では、どうすればいいのでしょうか
方法は次の2つです。
- 感情のもとを理解する
- 自分に許可を与える
自己イメージを知る
ひとつめの「感情のもとを理解する」は、その感情がどこからやってきているのかを知る、ということです。
行動の前には必ず「感情や考え」がありました。
そして「感情や考え」の前には「自己イメージ(セルフイメージ)」というものがあります。
自己イメージ→感情や考え→行動
行動を変えるには、感情や考えを変える必要がある、という話をしましたが、感情や考えを変えるには「自己イメージ」を変える必要があります。
「自己イメージ」とは「自分に対する自分のイメージ」です。
「私は料理が得意」とか「運動が苦手」とか「飽きっぽい」とか、自分を説明するときに出てくる言葉、ありますよね。
「自己イメージ」はあくまで「イメージ」であり、事実とは異なります。
事実と近しい自己イメージもあれば、ずいぶんとかけ離れた場合もあります。
「私は〇〇という会社で働いている」というのは客観的な事実ですが、その「〇〇で働いている自分」にどんなイメージを持っているか、こちらは自己イメージになります。
この「自己イメージ」が、感情や考えを生み出しているのです。
ひとつ例をあげてみましょう。
「〇〇で働いているんだー」と他人から言われたとします。
言った人はあくまで「客観的事実」を述べているだけ、としましょう。
もし、その会社が社会的評価も高く、そこでの仕事が大好きで誇りがある、という自己イメージがある人は、この言葉に「そうなんだよね(得意・うれしい)」といった感情をいだきます。
一方で、その会社が問題を起こしていて、そこでの仕事に不満や不安がある、という自己イメージがあると、この言葉に「なんか嫌な感じ…(卑屈・不満)」といった感情をいだきます。
どちらにしろ、なにかしらの「きっかけ」が「自己イメージ」と照らし合わせられたときに「感情や考え」が湧いてくるのです。
この「自己イメージ」は、自分が自分に貼った「レッテル」です。
どんな「レッテル」を貼っているのか、普段は気にしていませんので、書き出してみるとよいでしょう。
自分に許可を与える
ふたつめの「自分に許可を与える」というのは「ネガティブな感情を持っている自分を許す」ということです。
結局のところ、繰り返されるネガティブな感情というのは「自分の中に生まれた感情に気づいていない、ちゃんと向き合っていない」ことが原因のことが多いです。
子供の頃、何をするにも「見てて~」と親に言った記憶はないでしょうか。
自分がそこですることを、そこにいることをただ「見ていてほしい」。
これはだた自分がそこに存在することを、自分がそこですることを分かって欲しい、見ていてほしい、という欲求で、誰にでもあります。
そして、感情というものも、その子供と同じです。
振り向いてくれるまで「こっちを見て」と訴え続ける、つまり忘れたと思っていても、なにかの拍子に繰り返し顔を出すのです。
ですので「そうか、そこにいるんだね」と、存在を認めてあげることが必要なのです。
特に、自己イメージに「真面目」「正義感が強い」「完璧主義」などがあるの方は注意が必要です。
こういった方は「ネガティブな感情を持つ自分=良くないこと、してはいけないこと」という考えがある傾向にあります。
「人を妬んだり羨んだりするのはみっともない」
「イライラするのは心が狭い人間の証拠」
「クヨクヨするのは弱い人間のすることだ」
といった考えのことです。
これを「価値観」といいます。
価値観は自己イメージを生み出しています。
価値観→自己イメージ→感情や考え→行動
自分がネガティブな感情を持つことに許可が出せていないというのは、
「人を妬んだり羨んだりするのはみっともない」=「人を妬んだり羨んだりしてはいけない」
「イライラするのは心が狭い人間の証拠」=「心がせまい人間になってはいけない」
「クヨクヨするのは弱い人間のすることだ」=「弱い人間ではいけない」
という、価値観が行き過ぎて「禁止事項」になってしまっています。
これは、自分では意識できていないことがほとんどです。
人は意識的にできることもよりも、無意識にしていることの方により強く影響されます。
なので「ネガティブな感情を湧いてこないようにしたい」と頭で考えていても、無意識にできている「ネガティブな感情を持つことはいけないことだ」というルールが勝ってしまいます。
ネガティブな感情を持つことは、自分が持っている禁止事項に反します。
すると、自己イメージが「禁止事項を守っていない自分」になり、ネガティブな感情が湧くのです。
この自分が無意識で持っているルールに、気づくと、それだけで「ネガティブな感情を持っている自分を許す」ことができるようになったりします。
あとは「別にネガティブな気持ちを持ち続けててもいいや」と無理にでも繰り返し、自分に言い聞かせてみましょう。
はじめはうまくいかなくても、時間がたつに連れてだんだんと、許可できるようになってきます。
まとめ
「自己イメージ」や「価値観」はふだんなかなか意識する機会がありません。
あまりに当然のことすぎて、自分ではよくわからない、ということも多いです。
メタ認知が苦手だったり、第3視点が得意すぎたりすると、価値観を明確させるのはかなり難しくなります。
そういうときは、自分をよく知る人に聞いてみたりプロに相談してみてください。
時間の大幅な短縮にもなりますし、新しい発見をすることもできるはずです。
